年内学力試験が増えても、Fラン大学はなくならない
■年内学力試験が急増する背景
私立大学の約8割が「年内学力試験」を実施する意向を示しています。少子化により受験生が減るなか、大学側は早い段階で合格者を確保したいという事情があり、年内入試は今後さらに増えていく見込みです。
指定校推薦や総合型選抜が広がり、“無試験同然で入れる大学”が増える中で、「学力試験が増えるのは良いことでは?」と感じる人もいます。確かに、学力試験を導入すること自体は健全に見えます。
■実態は「学生の早期囲い込み」
しかし、その内側には「学生をいち早く囲い込みたい」という大学側の経営上の狙いがあることも事実です。
年内学力試験といっても、内容は大学によって大きく差があります。本気で学力を測る大学もあれば、基礎的な問題を並べただけの“落とさない試験”にとどまる大学もあります。
“学力試験を実施”と書かれていても、それが教育の質を保証するものではありません。
Fラン大学が「見えにくくなる」だけ
ここでポイントになるのが、いわゆる「Fラン大学」の存在です。
Fラン大学とは、偏差値が測定不能、または極端に低い、事実上ほとんど入れる大学のことを指す通称です。
本来なら大学の難易度は入試方式や内容で見えてくるはずですが、年内学力試験が増えることで、むしろFラン大学の境界が曖昧になり、見えづらくなっています。
■なぜFラン大学が見分けにくくなるのか
理由は単純です。
- もともと手続き化した入試を行っていた大学が
“一応、学力試験をやっています”という体裁を整えられる - 試験内容が非常に簡単でも、
「学力試験あり」と記載されることでレベルが高く見えてしまう
その結果、実力差がほとんど伝わらず、受験生も保護者も大学の実態を見抜きにくくなるのです。
さらに、年内に早く合格が出ることで安心感が先に立ち、大学の中身をよく調べないまま進路が決まってしまうケースも増加しています。
“ラッキー”だと思う人ほど危ない落とし穴
Fラン大学が見えにくくなると、
「入りやすい大学が隠れるなら、自分にはラッキー」
「学力に自信がなくても大学生になれるなら問題ない」
と考える高校生・保護者が出てきます。
しかし、この“ラッキー”には大きな落とし穴があります。
現実として、指定校推薦で入学した学生の中退は年々増え続けています。
これは以下のような構造的な問題によるものです。
- 適性や学力のチェックがないため、ミスマッチが起きやすい
- 入学後の授業についていけない
- 「なんとなく大学へ」で目的が持てない
- 大学側のサポートが弱く、孤立しやすい
入り口が“ラク”だと、その分だけ入学後のつまずきやすさが増すのが現実です。
Fラン大学が見えにくくなることで、短期的には「合格しやすいから安心」という気持ちが生まれますが、その安心感は長く続きません。
進路選びで本当に見るのは「入試方式」じゃない
では、進路はどう考えるべきなのでしょうか。
答えは明確で、
入試のラクさや学力試験の有無で大学を判断しないこと。
大学の質は、入試方式では測れません。
重視すべきは、
- 学べる内容(本当に興味をもち学びたい分野か?)
- 実習・演習の内容
- 教員の指導体制
- 就職支援の強さ(専門性がないと手あたり次第の就活になる)
といった、本質的な部分です。
専門学校というもう一つの確かな選択肢
大学だけでなく、専門学校という選択肢もあります。
専門学校は実践的な学びが中心で、職業に直結したスキルを身につけられるのが特徴です。
それぞれの業界からの信頼は厚く、「新卒でもスカウト型の就活」です。
大学は、「学生自ら1社ずつエントリーする売り込み型」です。
近年では、大学中退者が専門学校に進み直し、新卒として就職するケースも増えています。
「とりあえず大学」ではなく、「納得できる進路」を選ぶ時代に変わってきています。
入り口の“簡単さ”より、出口の“確かさ”が重要
年内学力試験の拡大は、進路選びをこれまで以上に複雑にします。
だからこそ、
「入りやすい大学」ではなく
「自分が学び続けられる大学・専門学校」を選ぶこと。
そして、
入り口の簡単さより、出口(卒業・就職)の確かさを基準にすること。
これが、これからの進路選びで失敗しないための最も重要な視点です。
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