大学ミスマッチの先に見え隠れする就職ミスマッチ・退職代行

1. 「とりあえず大学」は、高校時代の「ボタンの掛け違い」

多くの高校生が「とりあえず大学」の選択をする背景には、「大学へ行くのが当たり前」という高校の進路指導、大学指定校推薦の拡大、保護者の意向などがあります。

さらに、「将来やりたいことが見つからないから、とりあえず大学で考える」という“決められない”思考も同居しています。

しかし、この選択は、その後の人生に大きな影響を与える「ボタンの掛け違い」となる可能性があります。

高校時代に、仕事観、人生観を全く考えず、「大学に行けるから」という理由で進学した結果、さまざまな問題が起きています

  • 目的意識の欠如: 何をその大学で学ぶのか、という目的が明確でないため、入学後の学習意欲が低下し、本来の学生生活を送ることが難しくなる。
  • 専門分野への不適合: 与えられた中から選んだ大学・学部が、自身の興味や適性に合わず、大学での学習内容に苦痛を感じる。
  • 居場所がなく退学者が増加: 入学してから、大学に合わない、思ってたのと違うと気づき、退学者が増えていることが問題になっています。
  • 将来のキャリア像の曖昧さ: 専門性が乏しい学部・学科の場合、将来どのような仕事をしたいのかが定まらないまま、就職活動を迎え苦戦する。

2. 就職ミスマッチと退職代行の増加

高校時代からの「ボタンの掛け違い」は、「大学ミスマッチ」を経て、「就職ミスマッチ」へと繋がります。特にFラン大学の学生が直面する「売り込み型就活」は、この問題を鮮明に映し出しています。

大学の「売り込み型就活」: 学生自ら企業を探し、1社づつエントリーするスタイルです。大手企業には「大学フィルター」がありますし、中堅・中小企業にも、「やりたいこと」「何ができるか」を明確に言語化し、自身を売り込む必要があります。しかし、「とりあえず大学」で入学した学生にとって、これは極めて困難な作業となる場合があります。

  • 企業研究の浅さ: ジャンルを越えて多くの企業に手当たり次第エントリーする傾向があり、深い企業研究や自己分析が不十分なまま選考を迎えてしまう。
  • 「やりたいこと」のねつ造: 面接で「やりたいこと」を問われた際に、表面的な志望動機や、その企業に合わせた建前を語ることが多くなります。
  • 「できること」の限界: 専門性の乏しい学部・学科の場合、その企業は、採用してよい人材か判断がつきにくい場合が多くなります。
  • ミスマッチの内定: 結果として、自身の価値観や適性と合わない企業から内定を得てしまうことが多くなります。

このような経緯で入社した学生は、入社後に「こんなはずじゃなかった」というギャップに直面します。

内定をもらえれば、どこでもいいという就活の結果です。

企業の文化や仕事内容が想像と異なり、自身の「仕事観」や「人生観」とかけ離れていることに気づくのです。

そして、「早期離職」「退職代行」の利用などへと繋がっていきます。

3. 専門学校の「スカウト型就活」との比較

一方で、専門学校の就職活動は、大学とは大きく異なります。

専門学校の「スカウト型就活」: 専門分野に特化した学校であるため、企業側が学校に直接求人を出す形式が一般的です。つまりスカウト型です。企業は、その専門分野を学んできた学生を求めており、学校側も学生の専門性やスキルを把握しているため、マッチングの精度が高くなります。

  • スキルの明確化: 学生は入学前から、自分が何を学び、どのような職種に就きたいかという明確な目標を持っており、「資格取得」「技術の向上」に取り組んでいます。
  • ミスマッチの少なさ: 企業と学生双方のニーズが最初から合致しているため、入社後のギャップが少なく、定着に繋がります。

この専門学校の就活スタイルは、高校時代に明確な「仕事観」や「人生観」を持って進路を選択した結果です。大学の「売り込み型就活」と比較すると、就職活動のミスマッチが、その前の「進路選択段階」から始まっていることに気づきます。

まとめ

「とりあえず大学」という進路選択は、高校時代の「仕事観」や「人生観」の“無意識”から始まる「ボタンの掛け違い」です。

「高校時代にそこまで真剣に考えていなかった」という保護者も多いはずですが、今は、そういう時代です。

このズレは、大学でのミスマッチを経て、就職活動における「売り込み型」の困難さに直面し、結果として就職ミスマッチや早期離職、さらには退職代行の増加という社会問題へと繋がっています。

本当に望ましいキャリアを築くためには、高校生はもちろん、高校の進路指導、保護者の求める「とりあえず大学」ではなく、本人の「仕事観」や「人生観」を深く見つめ直すことが大切です。

特に保護者の方は“ご自身の希望”ではなく“子どもの特性・資質”を十分に考慮してほしいと思います。

それが、その後の“学生生活”を充実させ、就職活動をより主体的なものに変え、最終的にミスマッチの少ないキャリアを歩むための第一歩となるのではないでしょうか。

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