高校生「やりたいことがない」のではなく、「言えないだけ」かも

はじめに:本音が見えづらい今の高校生

いま、進路を前にした高校生たちに目立つのは、
全体的に消極的な姿勢や、決めきれない態度

そして何より、「自分のやりたいことを口にできない」雰囲気です

「別に…」
「まだ分からない」
「何でもいい」
そんな言葉が、進路相談の現場では当たり前のように聞かれます

本当にやりたいことがないのか?
親や先生の期待を察して、あえて沈黙を選んでいるのか

「とりあえず大学」で埋もれる子どもの本音

いま、「とりあえず大学」という選択が正当化され、
子どもたちの本音や違和感が見えづらくなっています

もちろん、高校の「大学偏重の進路指導」も影響していることは言うまでもありません

進路選択に必要なのは、
子ども自身がどう生きたいのかを、安心して語れる環境です

第1章:大学に入ることが目的化した社会

いま、日本は大学全入時代に入りつつあります

18歳人口の減少により、多くの大学が定員割れ
誰でも大学に入れる時代になりました

さらに、学費支援制度の拡充で「お金がなくても進学できる」ようになっています

高校では、指定校推薦枠の拡大が進み、
偏差値や学力に関係なく、“手続き”だけで大学に入れる構造ができあがっています

そこに見えるのは、
学生を確保したい大学と、進学実績を作りたい高校の、
不健全な共存関係です

進学は「目的」ではなく、「手段」であるべきです。
でも今は、「大学に入ること」自体がゴールになってしまっているのです

第2章:「学力」も「意欲」も問われない進学の末路

偏差値30〜40台の高校からも、ルートさえ選べば大学進学が可能です

しかし、その中に本当に、
「その分野を学びたい」
「その環境で成長したい」
という思いを持った生徒はどれだけいるでしょうか

目的も適性もないまま進学した結果、
「授業についていけない」
「思ってたのと違う」
「合わない」
「向いてない」
などの理由で、「辞めたい」と感じるようになるのは、当然の流れです

中退や挫折は、単なる経歴上の問題ではなく、
子どもの自己肯定感や人生観にも大きな影響を与えます

実際、うつ状態になって大学を中退する学生も増えています

ミスマッチな進学は、子ども自身を追い詰めるリスクをはらんでいます

第3章:親の意向が強すぎると、子どもは“考えること”をやめる

進路選びの現場では、
「親が前のめり、子どもが消極的」という構図がよく見られます

「大学ぐらいは出ておかないと」
そんな親心が悪いわけではありません

しかし、それが強くなりすぎると、
子どもは“自分で考えること”をやめてしまいます

「親が望むなら…」
「自分の意見は後回しで」
と思うようになるのです

子どもは親のことを想っています

特に、就職氷河期世代を親に持つ家庭や、ひとり親家庭では、
「親の期待に応えなければ」
「迷惑をかけたくない」と、
子どもが精神的に板ばさみになるケースが少なくないようです

第4章:子どもの特性と資質に向き合うことの大切さ

「やりたいことがない」のではなく、「言えないだけ」かもしれない

それは、親が話を聞く姿勢で接していない、あるいは、
子どもが“安心して本音を出せる場”がないからかもしれません

本来、最も近くにいる親こそが、
子どもの性格や特性、価値観に気づける存在であるはずです

大学だけが進路じゃない

大学進学以外にも、
専門学校、就職、インターンシップ、起業など、
今は多様な選択肢が広がる時代です

「大学に行かない=失敗」ではありません

子どもが内に抱えている「言葉にならない思い」に、
親が寄り添うことが第一歩になります

第5章:まずはここから──高校と親ができること

まず、高校は「大学偏重の進路指導」からの脱却が求められます
高校は、「大学進学の実績を増やすことで、生徒募集に有利になる」
そう考えています

ですから、合格者数や進学率を目標にするのではなく、
一人ひとりの人生設計に合った“適性進路”の提案をぜひ行ってください

でも、本当に大事なのはここからです
それは、親の関わり方です

親は「自分の希望」を必要以上に子どもに背負わせないことです

「自分の人生」と「子どもの人生」を切り離して考えることが大切です

進路選びは、子どもと親が一緒に考え、探る、時間をかけた共同作業です

その過程こそが、子どもの自己理解や自立につながっていきます

おわりに:入りやすい大学=卒業しやすい大学ではない

今は、“誰でも大学に入れる時代”です

でもここに、親は見落としている、高校は隠している、重要な点があります

それは、“入りやすい大学=進級・卒業しやすい大学ではない” ということです

進学先は、ただの通過点ではなく、人生の大きな分岐点です

だからこそ、
進路選びは「子どもの人生を左右する本気の対話の場」であるべきです

「やりたいことがない」と思っている子も、
その奥には、言葉にできない“想い”があるのかもしれません

子どもの特性や資質を最も理解している親が、それに気づき、育てる視点を持つことが、これからの進路指導には欠かせないのではないでしょうか

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