高校進路指導の問題点──それって進路ガチャじゃないの?

第1章:指定校推薦が「枠」で決まる、まるで進路ガチャ

成績がふるわない生徒にも、大学から「指定校推薦」の枠が提示される

しかも、それを勧めてくるのは、高校の先生自身であることはご承知のとおり

特に、偏差値の高くない高校ではこの傾向が強く、「大学に行けるならありがたい」と思わせる構図ができあがっています

そもそも、指定校推薦とは、大学が「この高校から生徒を受け入れたい」と枠を提示する制度

でも現場では、“進学実績を作りたい高校”と、“定員を埋めたい大学”の利害が一致した取引のようになっていることも──。

これでは、本来の目的である「生徒の希望や適性に合った進学」とはかけ離れています

第2章:「うちの子が大学に行けるなら…」の構図

高校で行われる三者面談

ここで指定校推薦の話をされると、多くの保護者はこう思います

「うちの子が大学に行けるなら、ありがたいです」

でも、その提案は生徒の本音や将来像を十分に聞いた上でのものではないことも多いのです

「とにかく大学に進学」という進路指導が、知らず知らずのうちに当たり前になっていませんか?

親が強く押しているのではなく、「先生がそう言うなら」と受け入れてしまう

本当の希望や適性を置き去りにしたまま、進学が決まっていくケースが後を絶ちません

第3章:専門学校は最初から、意図的に“視界の外”に

専門学校の募集担当者が高校にあいさつ回りに行っても、「職員室に入れてもらえず廊下で立ち話」など、冷たい対応を受けることがあるといいます

ひどい場合は、職員室の奥で先生が両手でバツ印を出して「居留守」の合図をしている場面すら──。

つまり、多くの高校では、最初から専門学校という選択肢を“見せようとしない”のです

教員が専門学校に対する理解を深めようという姿勢がなければ、生徒に伝わることもありません

選択肢が示されなければ、生徒は「知らなかったから選べなかった」まま、進路を決めるしかなくなります

第4章:進路ガイダンスは“外注”まかせ

高校で開かれる進路ガイダンスは、多くの場合、外部の会社が運営しています

この会社が大学や専門学校に声をかけて集め、学校説明の場をつくっています

問題は、専門学校は参加費を払って出展するのに、ネームバリューのある大学は無料で参加できること、さらに専門学校はメインではない扱いという点です

そのため、ガイダンスの会場では「大学ばかりが目立ち、専門学校は少数派」という構図になりがちです

さらに、偏差値の低い大学(いわゆるFランク大学)は、高校からも外部会社からも声がかからず、参加できないこともあります

そんな大学でも「指定校推薦枠」という切り札を持っており、偏差値の高くない高校に対して、入学受け入れの提示を行っています

ガイダンスの現場では、結果として、生徒が接する進路情報は、最初から偏った内容になっているのです

ガイダンスで「どんな学校に出会えるか」は、生徒の努力とは関係のないところで決まっている

そんな現実を、保護者も知っておく必要があります

第5章:あの進路指導は誰のためか

「指定校推薦で進学したものの、大学を辞めてしまう生徒が増えている」──
こうしたニュースの背景には、こうした進路指導のあり方があります

とくに、偏差値の低い高校から進学した生徒に退学が目立つというデータも

成績や興味に合わない大学へ、強引に進学してしまった結果とも言えるでしょう

進路指導は本来、「生徒の人生を支える道しるべ」であるべきです

にもかかわらず、大学の都合、高校の実績づくり、の流れに流されていないでしょうか

保護者の方、高校生のみなさん、進路を選ぶときは、「自分の未来に納得できる選択か?」という視点を、思い出してください

おわりに:その進路、本当に「自分の意思」ですか?

指定校推薦という制度は、うまく活用すれば、生徒にとって負担の少ない進学方法です

けれど、現場ではその“便利さ”に頼りすぎて、本来向き合うべき「本人の希望や適性」が置き去りにされているケースが増えています

高校の進路指導、大学の募集枠、外部委託のガイダンスの構造──

すべてが「本人の意思決定」を後回しにするような仕組みになっていないでしょうか

「うちの子が大学に行けるなら…」という親の安心感も、
「なんとなく推薦があるから…」という高校生の曖昧な気持ちも、

気づけば、誰かの手によって決められたレールに乗っている状態、
「選んでいるつもりが、実は、選ばされている進学」になっていませんか?

進路選びは、ゴールではなく、スタートです

今の選択が、将来の可能性を開くものになるように──
「自分の意思で選ぶ」ことを、どうか忘れないでください

専門学校は都道府県の認可校です